ダイナミックオーディオは実は今年で55周年。皆様のおかげで長年オーディオのお仕事をさせていただいております。今回は5555店の1Fで働いている清水に、思い出の機材の話をきいています。以前に中古の部門で20年近く働いていた経験があり、ヴィンテージ製品にも造詣が深いスタッフです。


清水:”これはというもの”…ね。う〜ん。あるなぁ〜…ドイツ。

佐藤:今もあるものですか?

清水:…医療機器系のブランドって言ったら、何か思いつかない?

佐藤:え〜とburmester?

清水:いや、もっと古くて、Siemens(※1)。EURODYN。

佐藤:ああー!なるほど!

清水:まだ20代の頃だったかなぁ。当時中古で入ってきた鉄のフレームの2wayのスピーカーだったんだけど、いつものようにテストでパッと鳴らしてみて、フッと他のことをしようと少しその場から離れたら、どこまで行っても音の届き方っていうのが変わらないんだよ。

佐藤:おそるべし劇場用スピーカー。

清水:いまでも”ん、いいな”と思うのは2wayスピーカーだったりすることが多いんだよね。

佐藤:なんでしょうね。実は僕も割とそうなんですけど、スピーカーというものの表現としてすごく適切な気がします。

清水:うん。上下が伸びていることよりも、大事なものがなにかあるんだよね〜。感じるものが。

佐藤:想像力を掻き立てられる部分がありますよね。

清水:それと、これはプリアンプだけど、LNP-2Lってのはすごかったなぁ〜。

佐藤:おお〜Mark Levinson(※2)。

清水:そう。うちのお店に来たことあるの知ってる?サインもらっちゃったよ(笑)。実は一度、訳あって自分の家で試してみたことあるんだよね。LNP-2L。そしたらもう、全然変わっちゃってさ。

佐藤:あ~プリだけでシステム全体が。

(2020年7月24日 ダイナミックオーディオ 企画室 佐藤:文)


※1)Siemens(シーメンス)

今でこそ音楽を聴くという趣味のため、という側面が強い音響装置であるが、それがより実質的な目的において通信技術の最先端であった時代、各国の大企業は当時最高の技術者たちとともに、国の威信をかけてスピーカー製造にあたっていた。シーメンスのオイロダインはまさにその一例であり、今なお聴く者に衝撃を与える。

※2)Mark Levinson(マーク・レビンソン)

ここでいうのは、人名としてのそれである。1972年にMark Levinson Audio Systems社を、1984年にCello社を、また2007年にはDaniel Helz社を立ち上げた紛れもないオーディオ界の重鎮。プロのジャズ・ベーシストとして活動していたことがあったり、女優と結婚して変な本を出していたり、ちょっと常人では測りがたい面があるものの、彼の産み出した数多くの名機たちの傑出した性能もまた、揺るぎない。